ごあいさつ
医師会の活動の一つは、日進月歩の医学の発展に資する努力を徹底し、可能な限りで医療水準を向上させていくことであります。我が愛知県医師会は、県民の健康保持・疾患治療に欠かせない証拠に基づく医療、いわゆるEBMを実践してきている所であり、治験の推進もその1つと言えます。私達が使っている薬の多くは、特定の疾患にのみ有効であり、その有効性は、場合によっては個人個人で異なっています。又、薬の副作用も同様であり、それぞれ薬の有効性・安全性という言葉が使われます。私達はできるだけ少量で効果があり、多量に飲まなければ副作用が出ない理想的な薬を求めています。さらに難治性又は稀少な疾患に対する薬も併せて求めています。大学や製薬企業及び行政は、新薬開発を共同で進めており、国際間連携もほぼ定着して参りました。従来、動物実験のみで薬物効果が予測されていましたが、医学が進歩するにつれて動物実験のみでは予測不能なことが多く発見されましてヒトの体を用いてみないと分からないことが多く報告されてきました。
このような背景から、厚生労働省は新薬を市場に出す前に厳しいチェックを行い、臨床研究の治験の結果が承認の必須条件となっています。日本だけではなく、世界各国で進めています。海外で開発された新薬を日本でも使用できるようにするためには、国内での治験を行う必要があり、又、国際的治験にも参加することが求められています。しかしながら、新薬の開発における多くの治験は海外で行われることが多く、日本における治験の推進が、空洞化を避けるためさらに求められています。愛知県医師会は、2004年から治験を本格的に推進し、今や医師会主導で行う国内の治験の先頭を走っています。治験担当副会長として、愛知県医師会における治験をさらに発展させることが、世界に認められる薬を県民に提供できることにつながるものと確信しています。
因みに、愛知県医師会が行っている治験活動は、2003年1月に治験準備委員会を設置し、各種の標準作業手順書を作成し、後方支援病院の依頼をはじめ、理念と規定を整備しました。その後第1回治験審査委員会を2003年3月26日に行い、正式な治験ネットワーク業務を開始しました。第1案件は2004年2月20日でした。
また、治験を医師会員の手で実施していくことは、医師会員が世界が認める医療ガイドラインを遵守することであり、よって世界の医療を県民に提供し、EBMを実践していることであります。これは愛知県下の医療を向上させるものであることを明言できます。どうか皆様の御理解と御協力を切にお願いする次第です。
愛知県医師会副会長 大石 明宣